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新幹線台車亀裂その5

2018年2月28日

(平成30年3月1日に追記をしました。)

このコラムでは平成29年12月11日に発生したのぞみ34号の台車き裂の問題を何回か取り上げましたが,このたび,き裂発生の原因が明らかになったとのことです。

JR西日本の発表によると,台車枠を構成する側バリを軸バネ座という部品に取り付けるようになっていますが,この軸バネ座に取り付ける側バリの板厚は,設計上の8mm(加工後7mm以上)でなければならないのに,最も薄いところで4.7mmとなっていました。これは,何らかの理由で側バリの取付部分を研削して軸バネ座に取り付けたためと考えられます。設計上の厚さを下回るような研削は,本来行ってはならないとのことですが,本来すべきでない研削をした結果,側バリ底面の軸バネ座溶接部を起点として疲労破壊によりき裂が生じたようです。なお,台車枠の材質には問題はありませんでした。

http://www.westjr.co.jp/press/article/2018/02/page_11962.html

台車枠製造工程上のミスによるトラブルのようですが,そうなると台車を製造した川崎重工業株式会社の責任が問題となってきますね。JR西日本との契約がどのような内容であるかは分かりませんが,このような製品の瑕疵に対する責任をいつまで,どのようにとるのかが気になります。原因究明のため調査費用や,不具合のある台車(さらには,その疑いがある台車)の取替えに要する費用等の負担をどうするかという問題です。

他方,鉄道事業者は,定期的に車両の点検をしていますが,今回のように,目に見えない部分に生じた亀裂を見つけること自体容易ではないでしょうし,他にも点検項目がたくさんある中で,新たな検査を追加した上で,所定の時間内に作業を完了させるのは相当大変だろうと想像します。しかし,安全に関することですので必要な検査を疎かにすることはできません。鉄道事業者には,新たな検査責任が生じることになりました。

これまで,日本のメーカーに対しては,品質に問題のある製品を出荷することはないという信頼がありました。こうした信頼感は,暗黙の社会的インフラとして機能していたと思います。しかし,近時発覚した素材メーカーによる品質偽装などの問題をみると,製品の納入を受けた方も,これまで必要なかった検査をする必要に迫られます。日本の自慢であった社会的インフラが劣化してきているようです。

(追記)

川崎重工社は,側バリ底面の板厚を研削してしまい,設計より薄くしてしまった台車合計146台について,代車の製造費用を全額負担するとしました。また,JR西日本は,川崎重工社に対する損害賠償請求の可能性を否定しませんでした。

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