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共有物分割請求

2018年4月3日

相続などで共有関係が生じることがしばしばあります。こうした共有を解消するために共有者は「いつでも」共有物分割請求をすることができ(民法256条),共有物の分割について共有者間に協議が整わない場合は裁判所は競売を命ずることができます(民法258条)。共有者間にトラブルがなければそもそも共有物分割請求がされることは多くないでしょうが,トラブルが生じると共有物分割請求が問題となってきます。ところが,権利関係が複雑だと簡単に共有物の分割ができません。

判例時報の最新号(2359号)にもそのような事例が紹介されています。

事案は概略次のとおりです。すなわち,土地を相続等で取得した兄弟(A,B,C 但し,ABの持分は各4分の1,Cは2分の1)が,土地の上に,各階ごとに区分所有になっている3階建ての区分建物を建築し,Aが3階部分,Bが2階部分,Cの夫が1階部分を区分所有して居住することになりました(その後,夫は区分所有権をCに譲渡しました。)。そして,Cの夫が本件土地について土地使用権を有する旨及び本件各区分建物と本件土地とを分離して処分することができる旨の規約を締結しました。そうしたところ,ABとCらとの間で建物の管理や修繕の件で紛争が繰り返されるようになり,ついにCがABに対して共有物分割請求をしたというものです。

本件土地上の建物はA,B,Cがそれぞれ区分所有者である区分建物であり,Cの一存で競売にかけることはできません。他方,民法258条2項により,裁判所が競売を命じて第三者が土地を競落した場合,法定地上権(民事執行法81条)は成立しません(共有物分割のための競売は民事執行法195条の適用を受けますが,同法188条が同法81条の法定地上権の規定を排除しています。)。そのため,本件土地が競売されると,本件の区分建物には敷地利用権がなくなり,土地競落人から建物収去,土地明渡しを求められることになると考えられます。そうしたこともあり,裁判所は,高齢で年金受給者であるABが被る不利益が,分割請求が認められないことによるCの不利益に比して大きいと判断し,Cの共有物分割請求が権利の濫用となるとして,Cの請求を棄却しました(東京地裁平成28年10月13日判決)。

共有物の分割は原則自由なのですが,権利関係が複雑ですと分割は事実上困難です。遺産分割を税理士さん任せにしていると,なぜか分かりませんがやたら土地建物の共有関係を細分化することがあります。税理士さんとしては,相続税の負担を最小化しようとの意図があるのかもしれませんが,権利関係を複雑にしてしまうと,トラブルが発生した場合,その処理が極めて困難になります。そのため,ケースバイケースであるとは思いますが,分割の際には,将来トラブルが生じてもいいように,共有関係にすることはできるだけ避け,シンプルな形で分割した方がいいと思います。

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