神戸製鋼所の検査データ偽装
2017年10月12日
株式会社神戸製鋼所は,10月8日,「当社のアルミ・銅事業部門(同部門傘下のグループ会社を含む。)において,お客様との間で取り交わした製品仕様に適合していない一部の製品につき,検査証明書のデータの書き換え等を行うことにより,当該仕様に適合するものとして,出荷していた事実(以下「本件不適切行為」といいます。)が判明しました」とリリースしました。
要は,顧客から指示された仕様に適合しない製品を,検査証明書のデータを書き換えるなどして販売していたことになります。
このような「不適切行為」に及んだ背景には,納期や生産目標を達成するため,「これくらい問題ない」などと判断していたとか(読売),「民間企業同士の取引で契約順守の意識が低かった」とされています(日経)。
現場サイドとしては,経営の柱に成長しつつあったアルミ・銅事業において成長の足を引っ張りたくないという気持ちが強かったのかもしれませんが,逆に成長の芽をつんでしまった可能性があります。
今回の問題は,法令や日本工業規格(JIS)違反ではありませんが,契約違反であることはもちろん,検査証明書を偽装して納入先を信用させていました。
納入先の会社としては,神鋼社が証明書を出した製品の仕様に疑いを持つことはまずないわけで,神鋼社は,取引先の信頼を大きく損ねてしまったことになります。
納入先の会社は,今後,安全性に問題ないかどうかを確認しなければならなくなりましたし,場合によってはリコールへの対応や神鋼社に対する損害賠償を迫られる可能性もあります。まさに降ってわいた災難というほかありません(納入先の対応については,山口利昭先生のブログ「ビジネス法務の部屋」の記事(10月10日付「神鋼品質データ改ざん事件-被害企業側の説明責任」)をご参照下さい。)。
それにしても,神鋼社は,平成28年にも,そのグループ会社が製品のバネに関する強度のデータを偽装していたことが発覚して大問題になりました。
これは,JIS規格を満たしていない鋼線を企画を満たしているとして出荷していたというものですが,規格外の製品を,データを偽装して出荷していた点で本件と同じ構造です。
このような問題が発覚して大問題になったのに,どうしてアルミ・銅事業部で品質偽装を継続したのかよく分かりません。おそらく今後第三者委員会が立ち上がるでしょうから,企業風土に関連して偽装を継続した事情などについても解明されるのではないかと思われます。
それにしても,我が国のモノ作りは職人気質による高品質が,製品に対する信頼感と高い評価を得ていたと思います。
最近,今回と同様の問題が繰り返し発覚していることから,モノ作りのよき伝統が失われつつあるのではないかといわざるを得ません。効率重視の経営がよき伝統を失わせてしまっているとしたら残念なことです。
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