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弁護士布施明正 MOS合同法律事務所

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自動運転車

2018年1月23日

最近,自動運転車に関する記事が目立ちます。

自動運転車とは,加速・操舵・制動の操作の全部又は一部をシステムが行うことができる自動車で,自動運転レベルとその内容は次の5段階に分類されます(「戦略的イノベーション創造プログラム自動走行システム研究開発計画」)。

レベル1 システムが前後・左右のいずれかの車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施

レベル2 システムが前後・左右の両方の車両制御に係る運転タスクのサブタスクを実施

レベル3 システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内)

作動継続が困難な場合の運転者は,システムの介入要求等に対して適切に応答することが期待される。

レベル4 システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内)

作動継続が困難な場合,利用者が応答することは期待されていない。

レベル5 システムが全ての運転タスクを実施(限定領域内ではない)

 作動継続が困難な場合,利用者が応答することは期待されていない。

 我が国でもレベル2の車両が販売されていますし,杉並区内の公道でレベル3の実証実験が行われました(日経 平成30年1月12日)。これまでSFの世界だった自動運転車がいよいよ現実のものになりつつあります。

自動運転車の「安全運転に係る監視,対応主体」は,レベル1,2が運転者,レベル3以上がシステムとなっています。レベル3では,「作動継続が困難な場合は運転者」とされますが,基本的にはシステムが車をコントロールすることになります。このように,レベル2までは,運転者が責任を負い,その責任の内容は現行と同様と考えられますが,レベル3以上の自動運転車では,運転者によるコントロールがありません。ですから,このような自動運転車による事故については,現行法を前提とした場合,主に,システムを搭載した車両のメーカーが不法行為責任や製造物責任を負うと考えるのが一番しっくりくると思います。

ただ,現在の不法行為法では,予見可能性,結果回避可能性を被害者側が立証しなければなりませんが,システムがブラックボックス化していることから,メーカーに不法行為責任を負わせることはまず無理です。また,製造物責任法では,製造業者は,「製造物」の「欠陥」により他人の生命,身体等を侵害した場合に賠償責任を負うとされていますので,自動運転のシステムに欠陥があれば,賠償責任を負うことになります。しかし,実際問題として被害者がシステムの欠陥を立証するのは困難でしょう。しかも,製造物責任法では,「引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては,当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかった」ことを製造業者が証明したときは,賠償責任を免れるとされていますので(同法4条1号),メーカーはこの抗弁を主張すると思われます。

しかし,そうなると,自動運転車の事故により被害を受けた者は,他に責任原因があるような場合(例えば,道路の設置又は管理に「瑕疵」があったとして道路等の設置管理者である国や公共団体を被告とすることはあり得ます。)はともかく,そうでない場合には全く救済されなくなってしまいますが,それが社会的正義に反することも明らかです。

自動運転車の事故に対する民事的救済は,現行法の枠内で適切妥当に解決することが困難であると思います。そうすると,自動運転車の事故による民事的救済のために新たな法制度が必要でしょうし,過失の要件を緩和した保険商品の開発も必要でしょう。自動運転車には,人為的なミスによる交通事故を減少させるなど大きな社会的メリットがありますので,自動運転車の実用化は不可避です。そのための法的な枠組みの構築や社会的なシステムの整備が合わせて求められます。

 

社外取締役

2018年1月16日

本日の日経新聞によると,会社法改正試案に,「企業と株主の対話促進」とともに社外取締役に関して,社外取締役の設置を義務づける案と現行のまま義務づけない案を併記するとのことです。

社外取締役は,平成26年改正会社法で資格要件が厳格化されるとともに,一定の要件の会社が社外取締役を設置しない場合,設置することが相当でない理由を説明しなければならないとされたわけです(法327条の2)。日経新聞の記事では,社外取締役設置の義務化により,「企業側が社外取締役との情報共有を増やしたり,社外取締役の意見をより尊重したりする姿勢の変化が期待できる」などとありましたが本当でしょうか。

社外取締役に関しては,会社法改正とともに,東京証券取引所の有価証券上場規程に「上場国内株券の発行者は,取締役である独立役員を少なくとも1名以上確保するよう務めなければならない。」との定めがされ(445条の4 平成26年2月10日から施行),さらに,コーポレートガバナンスコードに「独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり,上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。」との定めがされました(原則4-8 平成27年6月1日から適用)。

これら一連の動きは,社外取締役による取締役会の監督機能の強化によりコーポレート・ガバナンスを実現し,日本企業の収益力を高めることなどを期待してのものでした。この結果,平成28年7月時点で,東京証券取引所の市場第一部に上場している企業の98.8%で社外取締役を選任しており,社外取締役が2名以上の企業も79.7%に上ります。したがって,一部上場の企業では,大部分が社外取締役を設置済みです。

しかし,東芝社が典型ですが,社外取締役がいればいいというわけではありません。

同社は,早くから,現行法でいうところの指名委員会等設置会社となっており,コーポレート・ガバナンスの優等生との評価を受けていました。しかし,その実態は,取締役会において社外取締役に対する十分な情報提供が行われておらず,社外取締役による議論が活発に行われていなかったなどとして,ガバナンスが形骸化していたことを認めざるを得ませんでした(平成29年10月20日付「内部管理体制の改善報告」)。

東芝社以外にも上場企業で不適切事案が相次いでいます。上場企業ですから当然のことながら社外取締役がおられるわけですが,それでも,不適切事案を防ぐことができませんでした。したがって,社外取締役の設置が即コーポレート・ガバナンスにつながるというものではなく,あくまでもコーポレート・ガバナンスのための必要条件に過ぎず,十分条件ではないということでしょう。

コーポレート・ガバナンスのためには,東芝社の報告にあるとおり,社外取締役に「十分な情報提供」が必要であり,そうしない限り社外取締役の機能を活かすことは難しいと思います。この点の実効性を確保する方策をとらないままでは,真のコーポレート・ガバナンスの実現はできないように思われます。

エレベーターの大臣認定不適合

2018年1月12日

昨年の年末は,リニア新幹線工事の談合問題や新幹線台車の亀裂の問題などがあったためにあまり目立ちませんでしたが,株式会社日立製作所や株式会社日立ビルシステム等(以下,「日立社」)が設置したエレベーター約1万2000台の戸開走行保護装置(以下,「本件装置」)について,国土交通大臣認定仕様に適合していなかったことが判明しました。

本件装置は,扉が開いたままエレベーターのかごが昇降等した場合に,自動的にかごを制止する装置で,①2個の独立したブレーキ,②かごの移動を感知する装置,③通常の制御回路とは独立した制御回路の3要件全てを満たし,かつ国土交通大臣の認定を受けるなどしなければなりません(建築基準法施行令129条の10 3項,4項)。

日立社によると,本件装置に関して大臣認定を受けた合計133件のうち,9件で速度監視装置に搭載したプログラム等に不適合があったとのことですが,いずれにせよ大臣認定を受けた仕様を勝手に変更してしまったわけです。どうしてこのようなことをしたのか,不適合となることを分かった上でしたのか否かは必ずしも明確ではありませんが,大臣認定の仕様と異なる製品を製造,販売したことは,たとえ安全性には影響しないとしても(実際,指定性能評価機関である一般財団法人日本建築設備・昇降機センターが大臣認定不適合となっている全てのエレベーターを調査した結果,安全性を確認したとのことです。),ルール違反であることは明らかです。

エレベーターに本件装置を設置することが義務付けられたのは,シンドラー社製エレベーターの事故(平成18年6月,高校生がエレベーターから降りようとしていたところ,扉が開いたまま突然エレベーターが上昇を始めたため,エレベーターの床と入り口の天井に挟まれて死亡した事故)を契機としています。このような悲しい事故を絶対に繰り返さないための定めである以上厳格に運用されるべきであり,安全性に影響しないと考えていても勝手に仕様を変更してはいけないのは当然です。

本件装置は,利用者の生命,身体の安全に直結するものである以上,小さな不適合であっても容認すべきではなく,仮に不適合を生じさせた場合は速やかに公表し,的確な改善策を講じることが重要です。このような対応をとらないと,後で大きな打撃を被る危険があると考えるべきです。

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