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弁護士布施明正 MOS合同法律事務所

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ベネッセ個人情報流出事件

2017年10月31日

株式会社ベネッセコーポレーショから個人情報が流出した件について,10月23日,最高裁判所の判決がありました。

ベネッセ社が管理する個人情報の流出は,ベネッセ社のシステム開発・運用を行っているグループ会社の業務委託先の従業員(SE)が,業務上貸与されたパソコンに個人情報をダウンロードして保存し,これを私物のスマホに移したというもので,SEがコピーを名簿業者に売却したことから発覚しました。このSEは,最終的に不正競争防止法違反により懲役2年6月,罰金300万円の判決を受けました。

他方,個人情報を漏洩された子どもの親が,ベネッセ社に対して損害賠償の支払いを求める訴訟を提起しましたが,第一審,第二審とも原告の請求を棄却しました。これに対し,最高裁は,第二審が個人情報漏洩で生じたプライバシー侵害による精神的損害の有無及び程度について十分審理を尽くさなかったとして,第二審判決を破棄し,高等裁判所に差し戻しました。

今後,ベネッセ社の責任の有無や責任が認められるとしてその賠償額等の判断が示されることになります。

とはいえ,個人情報の漏洩防止のため講じるべき措置は悩ましい問題だと思います。特に,今回のように,悪意を有する者から個人情報の流出を防ぐことは相当の困難を伴うであろうと思われます。

しかし,個人情報が流出した場合の重大なリスクを考えると,容易にコピーできないシステムにするとか常時監視する体制を整備するなど,相応の対応をしなければならないことは間違いありません。

神戸製鋼所と日産自動車

2017年10月28日

株式会社神戸製鋼所と日産自動車株式会社が大変なことになっています。

これまでもこのコラムで取り上げましたが,神鋼社は,検査データ改ざんの問題が発覚して会社が改善を指示したものの,その後も一部工場において指示された仕様からはずれた不適合品の品質検査データを自主点検の際報告せず,発覚を免れていたと発表しました。

他方,日産社も完成検査を行う資格を有していない検査員が検査の一部を行っていたことから会社が改善するよう指示したにもかかわらず,その後も無資格の検査員が検査の一部を行っていたことが発覚しました。

いずれも現場が会社の指示に従わなかったということであり,ガバナンスに問題があると指摘されるのもやむを得ないところでしょう。

また,日本のメーカー品に対する高い評価は,高品質であることはもちろん製品作りへの誠実さという信頼感に裏打ちされていると思います。

このメーカーに対する信用は,目に見えない社会的インフラともいうべきものです。

これまで日本のメーカー品に対してもたれていた安心感,信頼感が毀損されたことはやはり深刻に受け止めるべきと思います。

第三者の調査により,今回の問題の背景等が解明されるでしょうが,有効な再発防止策を早急に決める必要があると思われます。

日産自動車の完成検査問題

2017年10月24日

国土交通省は,今年9月,日産自動車株式会社について,「社内規程に基づき認定された者以外の者が完成検査の一部を実施していたことを確認しました。」との報道発表をしました。

完成検査は,国が型式に照らして一台一台検査するのが原則ですが,国に代わってメーカーが実施することが認められています。この際,各メーカーが認定した有資格者である完成検査員が完成検査をする必要があります。日産社は,社内規定に基づいて認定された完成検査員ではない検査員が完成検査の一部を行っていたことになります。

無資格の検査員が関与するようになった経緯や背景については,第三者による調査結果が明らかにされると思われます。

日産社は,リコールを実施するとともに,国交省に対し業務の改善等を報告し,国交省もこれを受けて完成検査の確実な実施を確保する業務体制の改善等の指示をしました。

本来であれば,これでこの問題は収束するはずでした。ところが,国交省に報告した後も日産社では無資格の検査員による検査が続けられていたことが判明しました。

これはコンプライアンスの観点からして相当まずい事態です。

どうして無資格者による検査を続けたのか判然としませんが,定められたルールどおりに完成検査を実施するよう指示されたものの,他方で遅滞なく車を出荷する必要性もあることから,現場サイドの判断で無資格の検査員に検査の一部を行わせ続けたという可能性があります。

えてして,経営側の皆さんは,部下や現場に指示はするもののそれを実現するための具体策は部下任せ、現場任せにする傾向があるかもしれません。

平時の場合はそれでもいいかもしれませんが,再発防止が求められる有事の際には,できるだけ具体的な方法を示した方が適切であることは間違いありません。

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