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フジテレビ

2025年1月31日

株式会社フジテレビジョン(以下,「フジテレビ」)とその持株会社である株式会社フジ・メディア・ホールディングス(以下,「ホールディングス」)は,2025年1月27日,タレントのN氏と女性との間で生じた事案(以下,「本件事案」)に関する共同記者会見を開きましたが,27日午後4時に始まった会見が,途中,1回の休憩をはさんで翌28日午前2時30分ころまで延々と続きました。
本件事案は,2023年6月に発生したとのことですが,フジテレビは本件事案を把握しながらN氏の出演する番組の製作や放送を続けており,2024年12月に女性セブンや週刊文春で報道されてからようやくN氏が出演する番組の打ち切りを決めるなどの不可解な対応を続けたあげく,2025年1月17日に行ったフジテレビの社長の記者会見が火に油を注ぐこととなり,スポンサーが大挙してCMの出稿を見合わせたり,CM契約を打ち切るなどしたため,ホールディングスとの共同で完全オープンな形式による記者会見をすることになったものです。
N氏は,女性との間で,N氏が9000万円の示談金を支払う等の示談を成立したとのことですが,一連の騒動を受けてN氏は芸能活動を終了することになりました。

フジテレビとホールディングスは,2025年1月23日,弁護士による第三者委員会を設置し,事実関係及びフジテレビの事後対応やグループガバナンスの有効性を調査,検証することになりました。
第三者委員会に嘱託した調査事項は

1 本件事案へのフジテレビおよびホールディングスの関わり
2 本件事案と類似する事案の有無
3 フジテレビが本件事案を認識してから現在までのフジテレビおよびホールディングスの事後対応
4 ホールディングス及びフジテレビの内部統制・グループガバナンス・人権への取組
5 判明した問題に関する原因分析,再発防止に向けた提言
6 その他第三者委員会が必要と認めた事項

とされています(ホールディングスのリリース)。
昨今はハラスメント対応が極めて重要となっており,その対応を誤ると事業の継続に大きな支障を生じさせる経営上の重要事項になっていますが,会見の内容等からすると,フジテレビ、ホールディングスは,ハラスメントを含む人権感覚が昭和のころとほとんど変わっていなかったと考えれば説明がつくと思います。
本件事案やその背景については第三者委員会の調査により明らかにされると思われますが,第三者委員会は,3月末をめどに調査を終了するとのことです。ただ,調査事項に本件事案の類似事案も含まれていることから,調査すべき資料も膨大でしょうし,ヒアリングの対象者も広範囲に及ぶことは確実であり,調査補助者を大量に投入したとしても,3月末をめどに終了することは相当厳しいのではないかと考えられます。この点は,山口利昭弁護士も指摘されています。 http://yamaguchi-law-office.way-nifty.com/

とはいえ,第三者委員会を構成する弁護士は,いずれも不正調査のプロの方々であり,日弁連の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠した調査がされるとのことですので,相当公正な調査がされるものと考えられます。
先ほども述べたとおり,フジテレビ,ホールディングスは,ハラスメントを含む人権感覚が昭和のまま進歩していなかったと考えられ,昭和の時代には許されていた(黙認されていた)としても,今では許されなくなっていることに気付かなかった,あるいは,気付かれないようにやれば問題ない,さらには,ハラスメントなど気にすれば視聴率を取る番組を作ることができないという開き直りがあったのかもしれませんが,いずれにせよ,時代のルールに適合する会社の運営ができていなかったということは,やはり,ガバナンスに重大な欠陥があったからといわざるを得ません。第三者委員会の調査では,このような人権尊重に対するガバナンスの欠如が厳しく問われることになると思われ,フジテレビ,ホールディングスは,第三者委員会の調査結果を踏まえて役員等の出処進退を決めることになると思料されます。

ところで,27日の会見の中で再三質問されていたのは,本件事案に関するフジテレビの社員の関与の有無,本件事案を巡る会社の対応,フジテレビとホールディングスのガバナンスの問題でした。
この会見については辛い評価が多いようですが,本件事案が性加害問題であり,被害女性のプライバシーに対する配慮が不可欠であることや第三者委員会による調査が開始されたばかりのタイミングであることからすると,5名の役員の方が回答できる範囲にはおのずと限界があるのはやむを得ないことであって,回答内容の空疎さを批判しても仕方がないように思われますし,追及の波状攻撃を受けても平身低頭しつつ壊れたテープレコーダーのように想定問答の回答を繰り返したことは,あのような守りの会見の対応としてむしろ当然であると思います。
会見は長時間に及びましたが,多くの質問者がルールを遵守し,かつ簡潔明瞭に質問をされていた一方で,一部の質問者はルールを無視して長々と独自の見解を主張して,結局何を質問したいのか本人も分からなくなってしまったお粗末なものもありましたし,参加者の一部は不規則発言をくりかえしていました。記者会見ですので意味不明な発言を途中で制限することが困難だったと思いますが,会見が異常に長時間に及んだ一つの原因は,無用な意見を述べていた一部の質問者の質問力の決定的な欠如や不規則発言をした一部参加者にあると思います。ただ,ひな壇に座らされていた役員の皆さんは,意味不明な発言や不規則発言がされている間は,ノイズを聞き流して頭を休めることができたかもしれません。
いずれにせよ,守りに徹した27日の会見は,フジテレビ,ホールディングスとしては異常な長時間に及んだこと以外は予定どおりだったといえるのではないでしょうか(フジテレビやホールディングスに対する同情論が沸き起こったのは想定外だったかもしれませんが。)。

 

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