東京・銀座の弁護士

弁護士布施明正 MOS合同法律事務所

コラム Column

HOME > コラム > 下請法違反

下請法違反

2025年3月11日

公正取引委員会は,2025年2月18日,自動車部品メーカー2社に対し,下請事業者に金型等を貸与していたところ,当該金型等を用いて製造する部品の製造を大量に発注する時期を終えた後も,多数の金型等を自己のために無償で保管させて,下請事業者の利益を不当に害していたとして,下請法(正式な名称は「下請代金支払遅延等防止法」)に基づいて,下請法違反の事実を取締役会の決議により確認すること等の勧告をしました。
金型等の無償保管の件では,その後も同月20日,機械メーカーに対し,同年3月7日,自動車部品メーカーの子会社に対し,それぞれ同様の勧告をしました。
さらに,同委員会は,同年2月28日,家電量販店に対し,同社がプライベートブランド商品の製造委託をしていた業者に対して「拡販費」等の名目で,当初取り決めていた代金から一定額を減額して代金を支払っていたことを下請法違反として,勧告をしました。
このように公正取引委員会はこのところ下請法違反による勧告を立て続けに出しています。
これは,下請事業者に対する「下請いじめ」ともいうべき取引慣行を改め,下請事業者が適正な利益を得られるようにし,ひいてはその従業員の給与の引き上げを容易にするという当局の意図があると思われます。
このような状況で下請法違反による勧告事例が続いていますが,突然,公正取引委員会が下請法違反の勧告を活発化させたわけではなく,下請法違反による勧告はすでに2,3年前から何度も出されていました。
具体的には,金型等を無償で保管させていた事例では,2023年11月30日,2024年2月28日、同年3月25日にそれぞれ勧告がされていましたし,代金の一方的な減額については,2023年6月29日,同年12月22日,2024年3月7日に勧告がされていました。
ですので,既に他社に対して下請法違反による勧告がされたことを踏まえて,自社が下請法に違反していないか否かを確認する機会もあったでしょうし,仮に下請法に違反する事案を発見した場合,これを是正する措置を講じることが可能だったはずです。
ところが,今回勧告を受けた各社は,これらの確認をしていなかったか,あるいは確認して下請法違反の事案を把握したのに違法状態を継続させていたことになります。

企業が下請事業者に不当な要求をする理由はいろいろあるでしょうが,下請事業者に負担を強いることは,会社の利益を増加させるという関係にあることが一つ考えられます。
つまり,経営サイドからすると,下請事業者に不当な要求をのませればその分利益が増すことから,利益の増加や株価上昇の圧力にさらされている経営陣にとっては,経費節減の名目で下請事業者を叩こうとするインセンティブが働くといえます。
また,現場レベルにおいても,下請事業者を叩いて経費を節減できれば,自分の手柄として評価の対象になるでしょうから,やはり下請叩きをするインセンティブが働くといえます。
また,従前は,金型の無償保管やリベート等の名目での代金の一方的減額は慣行として広く行われていたとのことであり,こうしたことが長年にわたり続けられていたことも,下請法違反の是正を遅らせる要因になっているのかもしれません。
しかし,公正取引委員会の下請法違反に対する厳しい対応が今後も続くであろうと予想されるところ,違法状態を放置すると,公正取引委員会による勧告等がされ,公表されることになります。
したがって,下請法違反の状態を続けることは「下請いじめ」をする会社としてそのレピュテーションを大きく毀損することになりますので,現に下請法違反の状態がある場合は可及的かつ速やかに是正する必要があります。
しかし,違法状態の是正を現場レベルに任せても,現場サイドは一方では経費の削減を厳しく求められていますので,違法状態を是正することは必ずしも容易でないと考えられます。
そうすると,下請法違反の是正は,現場任せではなく,経営側のリーダーシップで下請法違反を解消させ,さらには今後も下請叩きをしないよう現場サイドに指示するしかないと思われます。

また,下請の関係は,親事業者,一次下請事業者,二次下請事業者といった重層的な構造になっています。
この場合,一次下請事業者が二次下請事業者に対して下請法違反の行為をした場合,親事業者の系列の会社という表現で新聞報道がされ,親事業者にも影響が及ぶおそれがあります(本年2月18日に勧告を受けた事例では,親事業者である自動車メーカーの名称が報道されました。)。
そうすると,親事業者としては,直接取引のある一次下請事業者との関係のみならず,二次下請事業者以下の関係も含めて点検をしないと,思わぬところで足をすくわれてしまうことになります。
製造業の場合,系列の関係が重層的で多数の業者が関与していることから,その全貌の把握は困難な点はあると思いますが,親事業者は,この際,系列の取引業者の全体について,下請法違反の事例がないかどうかを点検する必要があると思います。

いずれにせよ,下請いじめともいうべき不当な取引関係を一掃し,下請事業者が適正な利益を得られるようにすれば,社会全体にお金を回す契機になり、ひいては自社の利益にもつながるのではないでしょうか。

▲ページの上へ戻る