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弁護士布施明正 MOS合同法律事務所

コラム Column

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マンション敷地に戸建て

2017年12月18日

杉並区内の区分所有のマンションの駐車場に新築住宅6棟が建てられたとして,マンションの住民らが業者を訴えた裁判で,12月14日,マンション管理組合が6棟分の土地を買い取り,業者が6棟の建物を取り壊して撤去するという内容の和解が成立したとのことです(読売新聞 12月15日付)。

この事案は,産経新聞の記事(平成29年4月24日)によるとつぎのとおりです。

本件のマンションは,昭和46年に建築されましたが,その敷地面積約3000㎡のうち,建物部分の敷地約1700㎡は土地所有者と賃貸借契約を結び,残りの約1300㎡は,特に土地利用権を設定することなく,マンションの駐車場として利用されていました。

そうしたところ,平成25年,全体の約3000㎡を不動産業者F社が競売で所有権を取得し,F社は,駐車場部分(約1300㎡)を不動産会社G社に売却し,G社がこの土地に戸建て住宅6棟を建築する計画で建築確認申請をしました。ここで杉並区は,平成26年1月,マンション管理組合とF社に対し,「住宅ができるとマンションが違法建築になる」として,駐車場部分を管理組合に売却するか賃貸借契約を結ぶよう文書で行政指導するとともに,指定確認検査機関にも確認済証の交付留保を指示しました。

しかし,マンション管理組合が土地の買取等をしないうちに,F社とG社は土地の売買契約を合意解除し,F社がその関連会社であるA社に駐車場部分の所有権を譲渡し,A社が改めてG社に売却して,G社が再び戸建て6棟を建築するために確認の申請書を提出しました。この確認申請に対しては確認済証が交付されてしまいました。

これに対し,杉並区は,管理組合とF社に対し,行政指導に従わなかったとして,マンションを適法な状態にするよう勧告するとともに,これに従わない場合は「是正命令をする場合もあり得る」としましたが,結局,G社は6棟の戸建てを建ててしまいました。

こうして,マンションの住民らが,「行政指導などをくぐり抜け,住環境を侵害した」などとして,F社,G社などを被告として,住宅の撤去などを求める訴えを起こしたというものです。

なお,マンションの別の住民が業者を訴えた訴訟もあり,こちらは,戸建て住宅の撤去請求は認められませんでしたが,慰謝料33万円の支払いが命じられました(毎日新聞 平成29年4月28日)。

それにしても,どうしてこのような事態になってしまったのでしょうか。

一つの原因は,区分所有者側が駐車場の土地に利用権を設定していなかったことです。その結果,駐車場部分の所有権が第三者の手に渡ってしまったため,区分所有者側は権利を主張することができませんでした(なお,マンションの敷地は,これまでにも競売がされていたようです。)。

他方,G社の依頼を受けた指定建築確認検査機関は,杉並区に確認審査報告書等を提出し(法6条の2),そのため,杉並区がマンションの容積率が建築基準法の定める容積率の上限を超過することになるとして,是正措置命令を示唆したという経過であろうと思われます。ですので,F社あるいはG社は,区の指摘から,駐車場部分に戸建て住宅を建築すれば,マンションの容積率が不足することを十分に分かっていたわけです(区の指摘がなくても分かっていたとは思いますが。)。

確かに,駐車場だった土地に戸建て6棟を建築すること自体は建築基準法上は適法ですが,他方,マンションの容積率がオーバーすることで一種の既存不適格にしてしまうことになります。そうすると,例えばマンションを建て替えようとする場合,同じ大きさの建物が建てられないなどで資産価値が下落し,区分所有者にとって重大な不利益が生ずることは明らかです。

たとえ,建築基準法上適法であっても,裁判所から慰謝料の支払いが命じられたということは違法と評価されたことになりますし,結局戸建てを販売することができず,取り壊すことになってしまいました。また企業の評価にも影響があるかもしれません。G社が戸建て住宅の建築を強行するまでにはいろいろな事情があったのかもしれませんが,コンプライアンス上の問題があったことは間違いありません。

 

 

 

新幹線の台車の亀裂

2017年12月13日

今月11日,東海道・山陽新幹線「のぞみ34号」(N700系)が走行中に異常が発生し,調べたところ鋼製の台車に亀裂が入っていました。国土交通省の運輸安全委員会は,これを「重大インシデント」に認定して原因調査を始めています。今回のトラブルについて,「走行を続けるうちに台車に金属疲労が生じて小さなひびができたが,JR側の検査で見落とされた可能性がある。」などとする大学教授のコメントが紹介されています(読売新聞 12月13日付)。

このように今回は新幹線車両の台車に発生したトラブルですが,つい関連づけたくなってしまうのは,神戸製鋼所の検査データ偽装です。神鋼社は,顧客との契約で取り決めた仕様に適合しない製品を,検査証明書のデータを書き換えるなどして販売していました。神鋼社の製品は,新幹線車両の台車にも使用されており,JR西日本は,10月12日,神鋼社のアルミ製部材等が台車の車軸周りに使用されていることを発表しましたし,JR東海も,新幹線車両の台車部品の一部(台車枠の荷重を支える軸箱体等)に神鋼社の製品が使用されており,一部にJIS規格不適合のアルミの材料が使用されていたものの,安全上の問題はないと考えている旨発表しています(JR東海HP)。

ですので,これまでのところ,台車の亀裂と神鋼社の検査データ偽装は直接関係していないようです。しかし,今回のトラブルは経年劣化によるものと考えられます。ですから,神鋼社の検査データ偽装が最終完成品にどのような影響を及ぼすのかについては長期間にわたる検査が必要になりそうです。もちろん,何か問題が発生する前に,規格不適合品が含まれている部品を取り替えることになるでしょうが,その取替費用も神鋼社の負担になる可能性があります。神鋼社は,自らの責任とはいえ,大きな負担を強いられることに違いありません。

偽計業務妨害による強制捜査

2017年12月11日

株式会社大林組は,12月8日ころ,リニア中央新幹線工事を巡って東京地方検察庁による捜索を受けました。被疑事実は,偽計業務妨害だそうです。
建設業者による犯罪としては,公契約関係競売等妨害の罪(刑法第96条6),つまり,公共工事で予定価格を聞き出すなどして上限一杯近くで落札する入札妨害や,業者が話し合いでチャンピオンを決める談合が多いと思います。ただ,これらは「公の・・・入札で契約」が構成要件になっていますので,発注者が民間企業である場合は上記の公契約関係競売等妨害罪は成立しません。
もっとも,公の入札でなくても,偽計を用いるなどして公正な入札を害すべき行為をした場合は,偽計業務妨害罪が成立する場合があります。
かつて,国後島ディーゼル発電施設設置工事の施工業者選定のための一般競争入札において,三井物産の社員が,支援委員会事務局から予定価格を聞き出し,競争意思のある業者の入札参加を断念させる一方,競争意思ない業者を入札に参加させるとともに,予定価格を上回る金額で応札させ,三井物産が予定価格ぎりぎりの価格で落札したという件が偽計業務妨害とされました(東京地方裁判所平成15年3月6日判決 裁判所HP)。
裁判所は,「競争意思のある者による自由公正な入札に基づいて施工業者を選定し,施工契約を締結するという支援委員会の業務が実際に大きく妨害され」たと評価しています。
今回の件では,大林組のどのような行為が「偽計業務妨害」と評価されたかが必ずしも明確ではありませんが,おそらく,大林組が,発注者であるJR東海から予定価格に関する情報を入手し,ライバル会社に働きかけるなどして,大林組がとりたい工事を確実に,しかも予定価格ぎりぎりの価格で落札できるように働きかけたものと考えられます。
次に問題となるのは,東京地検がどのようにして今回の件を認知したかということです。
やはり,ライバル業者からの通報が一番可能性として高いように思われますが,内部告発の可能性も否定できませんね。このあたりは野次馬的な関心があります。
いずれ真相が明らかになってくるであろうと思われます。

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